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第151話
「……」
東洞の過去にそんな辛い事柄があったなんて…
言葉が出なくなる。
あの無邪気で人懐こく、一生懸命な姿は…そんな辛い過去を隠しているとは、全く感じさせられなかったが…
さっき、東洞に柚木のことを聞いた時…
震えて答えられなくなっていた…。
心に傷を抱えて…
あいつも、償いの人生を送っているんだな…
俺は助けてもらったから…
今度は俺があいつを助ける番だ…。
そう心の内で思っていると、優志が…
「それに、お前には清浄なオーラがある…尊の穢れを中和出来る能力が…それは尊にとって有益だから…」
溜めるように言葉を紡ぐ。
「尊のこと、どうか…よろしく、頼みます」
心を改め…急に敬語を使い、頭を下げてくる優志。
「あぁ、俺に出来ることなら…俺はアイツに助けて貰ったし…」
少し驚きながらも…頷き答える。
「けれど…もし、貴方まで柚木のようになってしまったら…俺は迷わず人祓いの法を仕掛けます…覚えておいてください」
その顔は真剣そのもので…
あいつを裏切って悲しませないでくれと…言外に伝わってくる。
「あぁ、そんなに脅さなくても、俺は金に目がくらんだりしない、現状に満足しているし、変わらないから…大丈夫だ」
「……ありがとう国近さん」
その言葉を噛みしめるように礼を言う優志。
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