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第160話

夜9時が過ぎる。 東洞とは23才離れているが、不思議と歳の差を苦痛には感じない。 「お前はいつも何時頃に寝ているんだ?」 何気に気になって聞いてみる。 「だいたい、夜10時です」 「10時?若いのに早いんだな」 「そうなんですか?お泊まりとか旅行とかしたことがないのでみんなが何時に寝ているのか知らなくて…」 「いや、いいんだが…ならそろそろ寝る支度をしないといけないんじゃないか?」 「はい、あ、お風呂わいているのでどうぞ、あと、国近さんはこちらのお部屋を使ってください、来客用の部屋です」 「おう、じゃ荷物を部屋に置いて風呂入ってくるか、お前先入るか?」 「いえ、僕は禊してから入りますから」 「そっか、なら先にいただくな」 「はい、どうぞ」 そうにっこり笑う東洞を横目に荷物を運ぶ。 そして着替え一式持って風呂場に… 禊場の隣にある風呂場の戸を引いて入っていく。 脱衣場で衣服を脱ぎ先に進む。 浴室内も趣のある木造りの広々とした浴槽だった。 「すごいな、温泉旅館に来たみたいだ」 つい独り言が零れる。 身体を流し、湯船につかっていると… 「国近さん、湯加減大丈夫ですか?」 戸の外から声がかかる。 「ああ、いい湯加減だ、温泉に入っているようだ」 「はい、温泉ですよ」 「え?温泉?」 「はい、地下に沸いた温泉を汲み上げて使っています」 「へぇ、凄いな…こりゃ、たまに入らせてもらいたいな」 「はい、ぜひ!いつでも来てください」 すぐ元気の良い声が帰ってきた。 「ははっ」 嬉しそうにする東洞が目に見えるようで笑ってしまう。

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