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第162話

「ですね、でも大切なものです。あの…国近さん、怪我は大丈夫ですか?」 以前、東洞が複数の動物霊に取り憑かれた際に、噛み付かれてしまい怪我をしてしまった。 「ああ、噛み傷?もう治ってるだろ。まあ、痕は少し残ったけどな」 肩を見せ、笑ながら答える。 傷口は塞がっているが、噛み痕がある場所がミミズ腫れのように痕が残っている。 「…すみません」 しゅんとして謝る東洞。 「いやいや気にするな、彼女でもいたら恥ずかしいが、残念ながら見せる相手もいないからな」 冗談めかしくいうが… 「……」 俯き言葉が出ない。 「そんな深刻な顔するな、お前のせいじゃないから」 「でも」 「俺はそう思っているから、それ以上、何か問題あるか?」 そっと頭を撫でて、優しく聞く。 「…国近さん、ありがとうございます」 本当に優しくて、あたたかい国近さん。 触れられ、綺麗なオーラが流れてきて、抱きつきたい衝動を抑えながらお礼をいう。 「さぁて、俺はそろそろ上がるから、しっかり温まれよ」 「はい、国近さん」 その姿を名残惜しそうに見つめてしまうのだった。 風呂から上がり、部屋で衣類を整理していると、東洞も風呂から上がって声をかけてくる。 「国近さん、何か飲まれますか?」

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