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第164話
「僕が殺したようなものですよね…」
産まれる為に母親を犠牲にする…まるで鬼の子だ…。
やや、顔を伏せ…無表情で呟く。
「東洞…」
「だから僕は嫌なんです…母親の命を奪ってまで霊媒師の家系を…血を残さなきゃならないのか…大切な人を犠牲にしてまで守らなきゃならない血筋なのか…僕は呪われた血筋を繋げる気には到底なれない…」
酒のせいもあるのか、コップを握りしめ、やや感情的になる東洞…
「東洞、…そうだな」
そんな東洞の頭を撫でて、頷いてやる。
「国近さん…」
「お前がそう思うならそれでいい」
以前、東洞は…
(僕は僕の子どもに、僕みたいな人生を歩ませたくない)
そう言っていたことがある。
あの時は、なんとなく聞いていたが…こういう事も東洞が血筋を残したくない理由に含まれているんだな。
力が強すぎて母親を危険に晒してしまうとは…しかも意思を持たない赤子の頃から…
産まれる間際など、東洞にはどうすることも出来ない事柄だ。
霊媒師というのは、本当に重い宿命を持っているんだな…。
「ありがとう、国近さん…僕、国近さんに出逢えて良かった…本当に」
「ふ、大袈裟なヤツだな」
そうして、たわいない会話をしていると、酒がまわったのか東洞はうとうとし始めた。
「東洞、そろそろ眠いか?」
「いえ」
首を振るが、見るからに眠そうだ。
「無理しなくていいから、普段は22時には寝てるんだろ?」
話し込んで、いつの間にか22時半を過ぎていた。
「はい、でも国近さんと話すのは楽しいから…」
「はは、話の続きは明日すればいいさ」
「あ、あの…僕と一緒に寝ていただけませんか?」
不意にそんなことを言う東洞。
「え?」
「……」
「東洞、大人になったら男同士で普通一緒に寝たりしないぞ」
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