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第169話

見守りながら、至近距離で瞳を重ねると、東洞は微笑む… その可愛い表情にひそかにドキリとしながら、平静を装って声をかける。 「そのまま、続けて…」 「ハァ…な、なんか…ぁっ、出て…」 徐々に形が変わる中心… 「そう上手い上手い…それも一緒に擦って…」 「うん、…大きさが、ハァ…ん、だんだん、硬くなって…」 その言葉を呟いた瞬間… 『ここが硬くなったらお仕置きだからな、分かったか?』 頭の中に響く男の声… 過去に負ったトラウマが… リアルに心を縛る… 「ッッ!」 不意にビクッと身体を震わせる。 「ハァ、ハ…ッ嫌、」 そして瞳を固く閉じ、身体を丸めてガタガタと震えはじめる東洞。 「東洞!?どうした?東洞、大丈夫か?」 突然のことに驚くが…そっと背をさすり落ち着かせようとする。 「ハァ、ハァ…怖い…怖いよ」 昔の記憶がフラッシュバックして… 混乱する東洞… 頭を抱えて震える。 「大丈夫だ、大丈夫だから、落ち着いて…」 耳元で言葉をかけるが… 「痛いことされる…気持ち悪…もうヤだ…っ」 なかなか言葉が通じず、そのまま俯いて泣き始めてしまう。 「東洞…大丈夫、お前をいじめる奴はもういないから…大丈夫」 そっと抱き寄せ、包み込むように優しく囁き… なだめ、安心させる。 綺麗で温かいオーラに包まれて…      震えていた東洞は、少しずつ落ち着いてきて… 「ハァ…、国近、さん…」 「あぁ、大丈夫か?」 顔をあげて、覗き込む東洞に優しく聞く。 「ごめんなさい…ふッ、っ、やっぱり僕にはできない…できないっ大人になれないッふっ、ぅ」 今度は謝りながら、首をふり泣きはじめてしまう。 「東洞…」 そんな様子に、胸が痛むが…どうしてやることも出来ず。 ただそばにいて慰めてやるだけだった。 その後、東洞は朝の禊に行くため部屋を出て行った。

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