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《出張中に》

そして、国近がいない職場での仕事が始まる。 仕事量は国近が調節し、残業にならない程度の仕事を割り振っていた。 1日目の終業時間。 席を移動して、国近の席で仕事をしながら東洞の様子を見ている山岸。 「片付いたか?」 「はい」 「よし、なら上がるかな、データ保存忘れるなよ」 伸びをしながら東洞尊に指示する。 「はい、わかりました」 パソコンを終了させている尊を見つめ、ぽそっと囁く。 「…お前、そっち系だろ?」 「え?」 「初めて見た時から気づいてたぜ、髪も伸ばしてるしな、そういう雰囲気だ、俺もそうなんだ…」 「?」 何の話…? 「お前、国さんが好きなんだろ?」 「っ…」 言われてドキっとする。 「図星か、分かりやすいな…でも国さんは無理だぜ」 その反応をみて、クスッと笑い続けて話す。 「国さんはみんなから好かれる性格だからな、女子社員にも人気なんだ、けどな、落としに行った女子社員はことごとく振られてるし…」 「……」 「もしかしたら国さんもそっち系かと疑ったこともあったけど、全然違った、男なんか眼中になかったからな」 「あの歳まで独身貫いてんだ、国さん想ってても永遠片思いで辛いだけだぜ」 「……」     

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