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第192話

「国さんは、俺が入社した時にはもう中堅でな、面倒見がいい先輩だったよ、不真面目な俺にも親身になって指導してくれたし、国さんが新人に優しいのは昔からなんだよ」 山岸は車を走らせマイペースに話し始める。 「……」 「お前だけ特別なわけじゃない、それに俺に任せて出張行くくらいだから、だいぶ手が離れたと思ってるんじゃないか?」 「……」 「いつまでも新人って訳にはいかないし、色々世話してもらえるのも今のうちってこと、わかる?」 「……」 「だから、国さん以外の同僚とも親睦を深めなきゃダメだってこと、これは国さんの願いでもあるんだぜ、俺を選んだってことは、まずは俺と仲良くなれってこと」 「幸い、性癖が同じって共通点もあることだし、仲良くしようぜ、なぁ東洞尊くん」 「……」 答える言葉が出ず、俯いてしまう。 「そんなに引かれると傷つくなぁ」 「お近づきの印に、これ見せてやるよ、ゲイのアダルトビデオ、見たことないだろ?」 「アダルトビデオ…」 AV自体見たことがなくて困惑するが… 返事など待たず、ひとけの無い駐車場に車を停めて何やら準備している山岸。 「普通のAVは男なら見てて当然だけど、ゲイのは持ってないだろ?これで男同士の大人の愛し方ってやつを勉強してみな、本より刺激的だぜ」 「……僕はそんなものは…」 首を振り拒否するが… 「まあまあ、ほら再生」 「……」 動画が車内に流れ始める。     

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