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第194話
約束通り解放され、近くの駅で降りた東洞、不安になりどうしても声を聞きたくなって、
携帯電話でかけたのは…
「……」
「はい、東洞?どうしたんだ?」
「…っ、国近さん…」
国近の声に安堵して…また涙が出そうになる。
「ん?ちゃんと仕事頑張ってるか?」
「…ん、国近さん、早く帰ってきてください…」
「なんだよ、まだ二日目だぞ、俺がいなくてもしっかりやらないとな」
「でも、…早く会いたい、国近さんに会いたいです」
「………」
その言葉に胸が熱くなるが…
「…国近さん、」
「東洞、俺もいつまでも側にいてやれる訳じゃないんだからな、俺がいなくても一人前にならないとダメだろう」
ぐっと堪えて、敢えて突き放す言葉を出す。
「……、でも…」
山岸と同じことを言う。
「分からないところは山岸に聞いて、しっかりやれよ」
「…山岸さんは、」
「あと4日で帰るから、成長した姿を見せてくれ、楽しみにしているからな」
「…国近さん、」
「じゃあな。お疲れ様」
「待っ、……」
電話を切って、溜め息をつく国近。
俺に依存している東洞を離すため…冷たくあしらった。
自立してほしいという思いもあるが…
一番は、自分の気持ちを整理したかったからだ…。
会いたいと言われて嬉しかった…
本当は今すぐ会いに行ってやりたいとすら思ってしまった…。
そんな気持ちを持つことは許されない、部下に、しかも男の東洞に…
なんとかこの感情を無かったものにしたいがため、冷たくあしらうしかない、距離を置くしか…
そう、大きくため息をつくしかない国近だった。
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