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第200話

部屋を変え、柚木の話を聞くことにする。 「昔はこんなんじゃなかった、明るくてしっかりしてて、普通の母親だった…」 「引っ越ししてから全てが狂い始めた…父さんは突然自殺するし、母さんは何かに取り憑かれたように暴れ出して…」 「姉も体調を崩して、病院を回ったけど原因不明、挙句2人とも精神病だと言われて…」 「けど精神病院でもらった薬は一向に効かないし…明らかに違うんだ…」 柚木は必死に説明する。 「家の中で変な物音はするし、変な気配がする、認めたくないけど霊現象が起こっていて…呪われたとしか」 確かにこの家、特に母親が寝ている部屋のあたりは重苦しい雰囲気が漂っている。 「寺に行っても根本的な解決にはならなくて…だから尊に、尊に助けてもらいたくて…けど、俺は尊に会いに行くことが出来ない、何故だかわからないけど、あの日から尊に近づけなくなって…あんなに通った家なのに行き方が分からない…尊に会いたいのに、」 「だがお前は、東洞を虐めていたんだろ?」 「俺はッ…、尊を金儲けのために使ったのは確かだ、けど、俺が手を上げたことは一度もないんだ」 「虐められている尊をみて何とも思わなかったのか?」 「…あの頃、尊はすぐに忘れてしまうと思ってた、だから、その時だけ…なぐさめてやって…本当に後悔してる、尊が傷ついてるなんて思わなくて、金が稼ぎたい一心で…俺はバカだった…」 顔を歪めながら後悔を口にする。 「……、東洞は今でも、あの頃の虐められる夢をみて苦しんでいる、都合よく助けてもらえるとは思えないだろう」 なおも、東洞の状態を伝え、説得してみるが… 「けどッ、もう、俺たちギリギリなんだ、父さんは自殺して、母さんはおかしくなって、姉さんは原因不明の病気で入院…俺も体調が悪いけど俺しか働けないから…ッ」

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