200 / 300

第201話

「尊は、力がある、霊能力者だ、あいつしか、もう頼るところがない…俺は、家族を助けたいんだ…っ」 涙を流しながら俯く柚木。 「それに、俺は尊に謝りたい、虐めの現場、あの時から俺の想いは止まったままだから、尊に謝って、止まった時を動かしたい…」 「どうか、尊と…、尊と連絡を取って欲しい、お願いします」 そう縋るように懇願する。 「……、」 参ったな、今でもトラウマで苦しんでいる東洞の、トラウマの原因とも言える人物が東洞を探している。 かなり切迫した様子で、助けを求めているが… 東洞からしたら、助けてやる義理もないわけで…けれど、俺が話を持って行けば、あいつは無視できないだろう、危険に巻き込んでしまうかもしれない… 優志だって許さないだろう。 霊能力者なら東洞じゃなくても…あの陰陽師の先生に頼んでみたらどうだろう… しかしどのくらいの依頼料がいるのか検討もつかないが… 「東洞じゃないとだめなのか?陰陽師も知っているんだ、おそらく依頼料はいるだろう、どのくらいの金なら出せそうだ?」 「…もう、うちに金はない…医療費と生活のため借金を重ねて…それを払っていくのにギリギリなんだ…そのうち、俺まで働けなくなったら、もう、野垂れ死ぬしか…」 「そう、言われても…参ったな」 「お願いします、尊に…」 「分かった、考えてみるから、連絡先を交換しよう」 「はい、お願いします!」 柚木航平の話を聞いて、重い気持ちで家を後にする。 東洞に、話すべきなのか? しかし、頼まれているからうやむやにはできない、一家の運命を握っているかも知れないんだから… 東洞に直接話すのは少し様子見て、優志に相談してみるか… しかし、優志は柚木を憎んでいる、近づけないような術をかけたのも優志、この話をしたら絶対に拒否するだろうし、怒りに狂うだろう。 だから、柚木の名前を出さず、さりげなく聞いてみるか…。 気が重い中、自宅へと帰っていくのだった。

ともだちにシェアしよう!