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第204話

そんな東洞を可愛いと思いながらも、自分の気持ちを整理する為にも緩く突き放す。 「……」 「さ、仕事だ」 哀しげな表情をする東洞を見ないように声をかけ、職場へと足を進める。 東洞は黙ってついてきているが、やや表情は沈んでいるようだ。 そんな様子を見ると、可哀想になり、ついつい甘やかしてしまいそうな気分になってしまうが、東洞の為にも、と心を引き締める。 「おかえりなさい国さん!」 社長に挨拶して自分のデスクにつくと山岸が声をかけてくる。 「おう、山岸、東洞の事ありがとうな」 「いえいえ、すっかり仲良くなりましたよ、な、東洞くん」 「はい…」 心配をかけないよう、山岸に合わせて返事をする。 「仕事ちゃんと出来てたか?」 「まあ、確かに遅いっすけど丁寧だし、ちゃんと出来てましたよ」 「そうか、そりゃ良かった、仲良くなったなら、一人立ちしたら山岸の隣にでも席変えてもらうか」 「もちろんいいっすよ」 山岸はすぐ頷くが…東洞は反発する。 「嫌です、僕、国近さんの隣がいい、なんでそんな意地悪言うんですかっ」 不意に国近にギュッと抱きつく。 その瞬間、暖かいオーラに包まれる。 「東洞…、」 急に感情的になる東洞に驚いたが、どきりとして一瞬止まってしまう。 「ありゃ、国さんのこと、相当お気に入りなんすね~」     

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