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第205話

「東洞、落ち着いて、今すぐって訳じゃないんだからな、」 山岸の言葉で我に返り、両肩を持って離そうとする。 「今でも後でも嫌です」 しかし、離れようとしない。 しがみついてくる東洞を、つい撫でてしまいそうになり、首を振り息を吐いて… グイッと東洞を引き離し… 「離れろ、大人ならこんな所でむやみに抱きついたりしない、ここは会社だ、仕事に集中しろ、分かったか?」 少し厳しい顔つきで叱る。 「…国近さん、ごめんなさい」 さらにシュンとする。 「分かったらいい、始めよう」 「はい」 返事を聞いて仕事を始める。 「はーい」 山岸も東洞に笑いかけ、デスクに戻って行った。 それから東洞は意気消沈したようで、話しかけてくることはなかった。 そして本日の仕事も終わりの時間に差し掛かる。 時刻を確認して東洞に声をかける。 「東洞、時間がきたから上がっていいぞ」 「あと、2枚で終わるので最後までして帰ります」 「ん、本当か?凄いじゃないか、」 「…はい」 褒めると一瞬嬉しそうにするが、また無表情になる東洞。 「じゃ、今日は最後までして帰るか」 「はい、頑張ります」 「お疲れっす、あれ?残業っすか?東洞ダメじゃなかったんですか?」 山岸が仕事を終え声をかけてくる。 山岸にも東洞に残業させないように伝えていたから…     

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