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第206話
「まあ、あと少しだからな、今日は最後までさせるよ」
「ふーん、頑張ったんだな、」
意味深に笑って東洞に目配せする山岸。
「……」
東洞は視線を合わせないよう俯く。
「俺が残るから山岸は上がれよ」
「はーい、今度から俺が東洞くんの残業付き合ってもいいっすよ」
「……っ」
山岸の言葉を聞いて、東洞は不安そうな顔をして国近を見ている。
「はは、じゃ俺が用事がある日は頼むかな」
国近の言葉を聞くと首を振り意思を示すが…
「いつでも任せてください」
山岸はマイペースに頷き笑う。
反論したいけど、また怒られたくない為我慢する東洞。
「あぁじゃ、お疲れ様」
「お疲れっす」
そのまま山岸は退社して行った。
「お疲れ様です」
山岸が帰ってくれてホッとする。
「さて、東洞はそれだけ終わらせて帰ろう」
「はい」
東洞は返事をしてパソコンに向かう。
しばらくして…
「国近さん…」
「なんだ?終わったか?」
「いえ、あの、…今日帰りにうちに来ませんか?」
本当に伝えたい言葉がうまく出てこなくて、自宅に誘ってしまう。
会社では触れられないなら、うちに誘うしかないから…
今日は全然、触れてくれない…
よく頭を撫でてくれたのに、頑張って仕事終わらせても…触ってもらえなかった。
国近さんに触れたい…久々に会えた国近さんに…
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