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第214話

「……」 少しの沈黙の後… 「あの、この間、出張に行かれていて電話した時、女の人と会っていませんでしたか?」 「ん?あぁ、」 唐突に柚木の母親のことを出され、一瞬どきりとするが、平静を装い頷く。 「その、国近さんの彼女さんですか?」 少し聞き淀みながら…それでも聞かずにはいられず思い切って言う。 「は?そんなわけないだろ」 まさかそんな質問が来るとは思わず、少し気が抜ける。 柚木の事がバレたわけではなかったから。 「そうなんですか!?」 逆に嬉しそうに喜ぶ東洞。 「前から言ってるだろう、恋人なんかいないし、作る気もない」 「……、じゃ、誰です?その女の人」 「……、いや、ちょっと知り合いの母親で病気がちだというから見舞いに行ったんだよ」 そう誤魔化すことにした。 「そうだったんですか、良かった」 「良かったって何が?」 「あ、すみません、国近さんに彼女がいなくて良かったって…」 「どういう意味だよそれは」 「だから、…その、僕が国近さんを好きだから、国近さんに彼女ができたと思って落ち込んでて…」 素直に理由を話し出す。 「東洞…」 「僕、国近さんの恋人になれませんか?」     

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