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第216話
東洞に煽られてこんな場所で理性を失うところだった。
「今日はもういいから帰るんだ」
そう退社を促す。
「国近さん、」
「俺のいない場所で冷静になって考え直してこい、俺のオーラに影響されすぎているんだろう」
普通に考えて20以上も年の離れた、しかも男同士がありえない。
自分を律しながら東洞に言い聞かせる。
「違う、本当に、好きなのに…」
なおも言う東洞を、少しキツ目に促す。
「いいから帰るんだ」
「はい、…お疲れ様、でした」
ようやく言うことを聞いて退社の準備をはじめる。
「やれやれ」
東洞を見送って、デスクに戻る。
そしてため息。
『国近さんになら何をされても平気…』
「東洞…いくらなんでも、」
殺し文句だろう…
俺がもう20才若かったらあのまま襲ってたかも知れない。
純粋さがなせる技なのか…東洞には本当に参る。
確かに東洞は可愛いが、自分がこんなに感情を乱されるとは…
頭を振って打ち消す。
このことも、柚木の件もやはり東洞とは話さないといけないか…
柚木の件は、柚木の名は伏せて、家の霊視だけでも…できたら…
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