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第232話
次の日、いつものように出社する国近。
いつもの場所で待つ、東洞尊。
「国近さん!おはようございます」
「あぁ、おはよう、あれから優志に叱られたりしなかったか?」
「はい、優志さんも何だかんだ国近さんには恩を感じているみたいです」
「恩?何のだ?」
「その、僕が動物霊に取り憑かれた日、助けてくれたこと」
「あぁ、あの程度のこと、俺がお前にしてもらったことに比べたら造作無いことだ」
「それでも、優志さんは心底焦って困っていたので」
「そうか、助けになったなら良かった」
「はい」
そうニコッと無垢な笑顔を向けて来る。
なんとも可愛い。
「今日も仕事頑張れよ」
ついつい甘やかしたくなるが、自分を律するように、顔を引き締め厳しく伝えてみる。
「頑張ります!」
それでも嬉しそうな東洞。
身体を繋げてからも距離感は変わらない東洞。
あれから、何もそのことについて話せていない…
はっきりと付き合うとも言えていないから、関係はあやふやなままだ。
けれど、上司と部下の関係で、歳も離れているし、なおかつ男同士。
関係をはっきりさせるのがいいのか、このままあやふやなままでいた方がいいのか…
ちゃんと話をするべきだよな。
かと言って東洞の家には優志がいるし、職場で話すにはディープ過ぎる内容…
一度、俺の家招いて話をしてみるか…
車の中で話してもと思ったが、車だど全面ガラスで東洞は霊に見つかりやすくなってしまうらしく、集中して話すことが出来ないようだから。
「東洞、」
「はい!」
「ちょっと帰りにうちに寄らないか?話したいことがあるから」
「えっ!国近さんの家!?」
はっと驚いた表情になる東洞。
「あー、問題あるならいいんだ」
「いえ!全然問題ないです!国近さんの家行きたい」
やはりニコニコして嬉しそうにしている。
「そうか、なら帰りに寄るから、一応優志に連絡しとくか」
「え、優志さんに言ったら、迎えに来ちゃいますよ」
「まあ、それが優志の判断なら、従った方がいいだろう」
東洞を守る優志の立場も考えてやらないと…
「……」
その言葉に納得できない表情の東洞だが…
「俺はお前たちの関係を壊したくないから」
優しく諭す。
「はい、」
「大丈夫だ、説得するから、隠し事をして信用を無くすより話した方がいい」
そう安心させるように伝える。
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