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《恋人に》
そうして、はじめて自宅へ東洞を連れて行く。
自宅はセキュリティマンションの6階。
一人暮らしだ。
「大丈夫か?」
「はい、ここは土地も悪くないですよ、それほど浮遊霊はいません」
ということは少しはいるんだな。
「ほら、うちだ、何かあればすぐ帰ればいい」
「お邪魔します」
玄関から先にリビングキッチンがあり、手前に浴室やトイレなどの水回り、奥に寝室といった一般的な1DKの洋風のマンションだ。
「そこに座っていてくれ」
リビングにあるソファを指して伝え、とりあえず寝室にあるクローゼットへ、ネクタイを解き上着を脱いでかけ、カバンなどを片付ける。
「すごい、床が全部、台所や廊下みたいなんですね」
「床が廊下?あぁ、フローリングのことか、確かにお前の家はどの部屋も畳だったな」
東洞の家は、かなり年季の入った旧家だ。
最近のマンションは大体フローリングだが、和室がないのは東洞にとっては珍しいんだろう。
「つるつるして面白い」
ソファに座って、床の感触を確かめている。子どものようだ。
なんとなく和みながら。
「この部屋に気になることはないか?」
一応、水を一杯出しながら、東洞のとなりに座り、少し気になったことを聞いてみる。
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