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第244話
「…あぁ、俺にも解る、凶悪なヤツがいる」
優志も怪訝な顔で頷く。
「…やつとは悪霊か?」
「いや、悪霊もだが、それよりタチの悪いのが住み着いているな」
「……」
「尊はここで待て、何があるか分からないから」
「大丈夫です」
「東洞、優志の言うことを聞いて少し待っていろよ」
「……はい、でも二人とも無理しないでください」
「あぁ、無理なんかしない、結界を張ってから行く。国近」
呼ばれ、優志の前にいく。
「あぁ、ありがとう」
「天上より天下まで、汝らの理を示し、体内よりいでし力の源、これをもってしてより光強くなりて邪鬼を退散させる壁と成せ!我力昇天結界、発!」
優志は符を掲げ、新たな呪文を唱えている。
「どうなったんだ?」
「お前は、オーラの力が強いから、それを増幅させ悪鬼が近づけないようになる結界を張った」
「そうか、ありがとう、お前は?」
「俺は来る前に結界をかけてきている」
「そうか、よかった」
「なら行くぞ、尊はここから少し離れて待て、中の本体に結界を張ったら呼ぶ」
優志は符を指に挟み身体の前に構えて促す。
「はい」
尊の返事を確認して動きだす。
優志に続き、玄関から部屋に入っていく。
「……空気が違う」
一言ぽつりと呟く優志。
「え?」
「いやぁぁあ!来るなぁ!」
足を進めると、母親が居るという部屋から叫び声が…
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