243 / 300

第244話

「…あぁ、俺にも解る、凶悪なヤツがいる」 優志も怪訝な顔で頷く。 「…やつとは悪霊か?」 「いや、悪霊もだが、それよりタチの悪いのが住み着いているな」 「……」 「尊はここで待て、何があるか分からないから」 「大丈夫です」 「東洞、優志の言うことを聞いて少し待っていろよ」 「……はい、でも二人とも無理しないでください」 「あぁ、無理なんかしない、結界を張ってから行く。国近」 呼ばれ、優志の前にいく。 「あぁ、ありがとう」 「天上より天下まで、汝らの理を示し、体内よりいでし力の源、これをもってしてより光強くなりて邪鬼を退散させる壁と成せ!我力昇天結界、発!」 優志は符を掲げ、新たな呪文を唱えている。 「どうなったんだ?」 「お前は、オーラの力が強いから、それを増幅させ悪鬼が近づけないようになる結界を張った」 「そうか、ありがとう、お前は?」 「俺は来る前に結界をかけてきている」 「そうか、よかった」 「なら行くぞ、尊はここから少し離れて待て、中の本体に結界を張ったら呼ぶ」 優志は符を指に挟み身体の前に構えて促す。 「はい」 尊の返事を確認して動きだす。 優志に続き、玄関から部屋に入っていく。 「……空気が違う」 一言ぽつりと呟く優志。 「え?」 「いやぁぁあ!来るなぁ!」 足を進めると、母親が居るという部屋から叫び声が…     

ともだちにシェアしよう!