244 / 300
第245話
その部屋の戸を開ける。
ボサボサのやつれた女が這いつくばって叫んでいる。
「…取り憑かれて居るのはヤツか?」
「恐らくな」
「そこにいろ、動くな!」
符を構え、そう指示をする。
「あぁ」
「諸々の罪穢れ…彷徨える魂よ一つとなりて此れ征す…封印結界術、術式参…縛呪結界ッ発!!」
「やめろぉぉお!」
母親は叫び狂うが…
妖魔が取り憑いている母親ごと結界に閉じ込める。
「これでひとまずは尊に危害は加えられないはずだ」
「東洞を呼ぶか?」
「あぁ、だが浮遊霊もいる筈だ、より慎重に。霊を刺激したから凶暴化している可能性もあるから」
「あぁ、」
優志に返事をし、走ってアパートの戸を開けて呼ぶ。
「東洞、来れるか?」
「……」
しかしそこには尊の姿はなかった。
「東洞?…優志、東洞がいない!」
「何ッ?しまった、外にもいたかッ」
優志も慌てて外に飛び出す。
「東洞ッ!何処だ!」
焦る俺を制して優志は…
「チッ、そんなに遠くには行けないはずだ、静かにしろ探す」
「……」
『探知結界…今一度、その範囲を拡大させ…我と繋がりし、心の臓に宿る結界を持つ者、東洞尊、彼の者の居場所を示せ…』
人差し指と中指に符を挟み天へ向け額のあたりへかざしながら…
広範囲結界を張り、その検索範囲を拡げ、神経を研ぎ澄ませ、尊を探す優志。
ともだちにシェアしよう!