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第246話
「ッかかった!5時の方向7mほど…」
「えっ?」
その声に振り返って見ると、今しがた出てきたアパートが…
「アパートにいるのか?」
「いくぞっ」
「待て、罠かもしれない」
「罠だろうが何だろうが、尊を守るのが俺の役目だ、必ず取り戻す!」
「…すまない」
尊に何かあったら…そうゾクっと震える恐怖感に支配されながら…
猛スピードでアパートに戻る優志を追いかけていく。
母親がいた部屋に戻ると、裏口から侵入したのか、見知らぬ女が尊を羽交い締めにしているのを見つける。
「離せ!!」
優志は勢いのまま、女に掴みかかろうとするが…
「来るな!こいつを殺すぞ」
女は寝間着のような格好をして、焦点の合っていない目で睨みつけながら、刃渡りのある包丁を尊の首に押し当てる。
「ッ、やめろ」
「東洞ッ」
ぐったりして意識のない尊。
二人は動けなくなる。
こんな情景、テレビのドラマでしか見たことがない。混乱しつつも、なんとか打開策を見つけようと頭を巡らせる。
「近づくな!」
「お前、結界師だな、母さんの結界を解け」
女は這い蹲り優志の結界の中から動けなくなっている柚木の母親を指していう。
「ッ、早くしろ、妙な真似をしたらこいつの首は胴体から離れることになる」
「わかった…」
尊が人質に取られているため、大人しく言うことを聞く優志。
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