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《柚木航平》
一方、アパートに独り残った優志は…
「ッ、待て!お前らの相手は俺だ!」
尊達を追おうとする女を制止する。
右手に刺さった包丁を抜き去り、左手で符を構える。
「出来損ないの結界師に何ができる?我らの姿も見えぬくせに、お前はすでに囲まれている」
「ッ」
「左手も符が握れないよう串刺しにしてやろうか?」
「ッ」
「逃げれやしない、しかし、お前にはしてもらわなきゃならないことがある」
そう女が不敵に笑い、部屋の奥を見る。
視線を追って見るとそこには…
「ッ!!ゆ、柚木!?」
あの日、別れたきりになっていた柚木航平の姿が…
「お久しぶりです、優志さん」
「どういうことだ」
「お前がかけた呪いのせいで俺の人生はめちゃくちゃだ」
「それはお前が…」
「まあいい、ようやくお前たちを見つけることが出来たんだからな、…あの男、お前たちのことを知っていたから、この呪いを解くために利用させてもらった、尊は母さんの宿主にする、その為にはこの呪いが邪魔だからな」
そうボソボソと呟いてにやりと笑う。
「なッ」
「さ、優志さん、俺にかけた術を解いてくれよ」
優志に詰め寄り、落ちている包丁を拾い、目の前にかざしながら脅す柚木。
「ッ」
「なあ、これがあるせいで、尊に会えない」
「会う必要はない!」
「会いたいんだよ、尊に」
視線は定まらず、操られているかのような話し方…
「ッ、」
正気を失っている…
コイツも操られているのか、いったい、何人を操っていやがる、母親が本体じゃないのか?一体、本体はどこだ…。
はっきりと視認が出来ず混乱する。
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