251 / 300
第252話
「頼むよ、じゃなきゃ、俺が優志さん殺しちゃうかも」
柚木は優志ににじり寄りながら、包丁を振り上げ、優志の腕にザクッと突き立てる。
「クッ、…離せ柚木ッ尊に会ってどうする気だ」
痛みを堪えながら柚木へ問いかける。
「…あんなことをして、尊に謝りたい…それで、もっともっと楽に稼げる方法を教えてやるんだ」
「ッ、」
妖魔に取り憑かれているため、柚木の記憶と混同しているのか…
憑依中はマイナス面が強調されるから。
「俺ならもっと上手い使い方ができる…」
一度包丁を抜き去り、その血のついた刃を舌で舐めあげながら、さらに狂ったように話し続ける。
「尊を使って…はは、ははははっ!」
正気じゃない。長期間憑依されているのは確かだ…柚木と妖魔の思考が完全に混同している。
説得はもはや無理…。
「ッくそ、」
ジリジリと壁際に追い詰められる優志。
「ほら、早く解けよ、」
「誰が!!」
「なら東洞尊がどうなってもいいのか?」
「何ッ」
「わざわざ逃がしてやったんだ、何も仕掛けてないと思ったのか?」
「何をした、」
「さあな、俺の呪詛を解いたら自由にしてやる、時間がないぞ」
包丁を煌めかせながら急かすように脅す。
「ッ、くそッ」
なんとか時間を稼いで、倉橋先生の到着を待つしか手がない優志だった。
ともだちにシェアしよう!