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第253話
一方、優志の車では…
車内で優志の身を案じながら二人で過ごしていると、警官らしき人物が外から声をかけてきた。
「すみません、ここで何をされているんですか?免許証見せていただけますか?」
「あ、はい」
職務質問だろうと、車から降りようとする。
「待って!開けちゃダメ!」
尊が厳しい声で制止する。
「え?」
「取り憑かれています、ダメです、結界を破るために来たんだと思います」
「え…」
「早く、見せてください…早く開けて早く…」
尊の声で踏みとどまる。
よく見ると、その目は焦点があっておらず、ボソボソと呟くように促してくる。
「開けたら侵入されます、無視しましょう、倉橋先生がくるまで」
「あぁ、すまない」
尊がいなかったら開けていた、警察官までも操っているのか…かなりヤバそうな相手…
そんなところに尊を巻き込んでしまって次第に後悔の念が国近の心を縛る。
「……」
それを伝えようと尊を見ると。
「国近さん、あの家、柚木くんの家ですよね…?」
ポツリと聞いてくる。
「っ!」
隠していた事実を突きあてられ…言葉に詰まる。
「あそこにいた霊のイメージが伝わってきたので、見えました」
「すまん、あいつを助けるには、名前はふせた方がいいと思って…言えば優志は手を貸してくれないだろうし」
頭を下げ、黙っていたことを正直に謝る。
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