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第254話
「そうですね、」
少し俯きかげんで頷く尊。
「お前が無理ならこの先はもういい、優志を助け出して、俺がなんとか、するから」
なんとかと言っても解決法などないのだが、こんな危険な目に合わせるつもりは無かったから。
尊にしてみれば、昔苦しめられた相手を助けてやる道理はない。
無茶なことを頼んでしまっていた。
「国近さん、僕は柚木くんを見つけてくれて感謝しているんですよ」
そっと、国近の手に触れながら、優しく微笑む。
「え?」
「柚木くんとは、話すらできないまま別れることになって、ずっと心に引っかかっていました」
その理由を伝える。
「それでも術の影響下にある僕にはどうすることも出来なかった」
「ようやく柚木くんと話ができる、謝ることができるんです、あの妖怪を退けたら」
「尊…、無理はして欲しくない、俺が巻き込んだせいですまない」
「いいえ、いつかは決着をつけなければならないこと、運命の歯車がそのように動いただけですから、国近さんに責任はありません」
「尊、本当にすまない」
そう言われても、巻き込んだのは俺、優志も傷つけて取り返しがつかない過ちをまた…
「国近さんらしくもない、大丈夫です、僕も、優志さんも、その世界では結構名が通っている霊能者です、信頼してください」
そっと手を両手で握りしめ、大丈夫、と優しく伝えてくる。
「あぁ、ありがとう」
後悔はある、しかし今は優志の救出が先決、悔やむのは優志を助け出してからだ。
そう思いなおして頷き、尊に礼を言う。
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