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第262話

そのまま盃を置くと、瞳を閉じて俯いたまま動かなくなる。 「……」 すぐそばで神降ろしの儀式を目の当たりにして、流血沙汰になる儀式だということに驚き、言葉が出なくなる。 左手からはまだ出血しており…痛々しい。 尊が俯いてからしばらくして、それは唐突に来た。 すっと顔を上げる尊… その顔つきは普段の尊のそれとはまるで別人の様に表情が全くの無に見える。 風など吹くはずもないが、ザワザワと尊の身体からなびく熱… これが神の纏うオーラなのか… 霊が見えない俺でさえ、何かを纏う尊の姿が見えたように思う。 尊の憑依が完了したのだろう、前で戦っていた陰陽師たちが脇へ避け、片膝をつき頭を低くする。 尊はすっと立ち上がり、妖魔たちを見据え、一歩前に足を踏み出した。 そして、一声。 『鎮まれ』 脳に直接響くような威圧感のある声。 右手で薙ぎ払うように妖魔たちを一喝する。 手から風が吹き出たような感覚… すると先程まで喚いていた女も母親もピタリと時が止まったかのように動かなくなる。 「今のうちに」 助手の陰陽師2人が気を失い動けなくなっている優志を助け出す。 不意に尊が力を失いその場に倒れこむ。 「東洞ッ」 「すぐにオーラで浄化を」 「はい、」 駆け寄ろうとしたその時… 凄まじい閃光が部屋中を走った。     

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