263 / 300
第264話
輝く尊の姿が、美しい女性の姿と重なって見えた瞬間…
『『ーー眠りなさいーー』』
心地よい、優しい旋律のような声が脳内に直接響き…
柔らかく撫でるように妖魔へ手を伸ばした瞬間、部屋全体が眩い光に包まれる。
「ぅぁあああッ」
土蜘蛛の宿主の母親が断末魔のような叫び声をあげ、その場に倒れふす。
側にいた娘も、何の抵抗もせず床に横たわる。
光が収束した時。
再び尊が床に倒れこんだ。
「尊ッたける!!チッ結界術、再結印」
すぐ優志が駆け寄り、まず身体の結界を閉じる。
「尊くん!しっかりして」
倉橋も焦っている。
「ッ」
慌てて近寄り尊をみると…
床に横たわり、顔面蒼白…白髪になり、口からは一筋血が滴っていて、ぴくりとも動かなくなった尊の姿。
「くそッ!尊ッヤバイ心臓がっ」
尊の胸に耳を当ててそう叫び…
優志も右腕をかなり刺されているため流血しているが、片手でも心臓マッサージを始める。
尊は心肺停止状態に陥っていた。
「国近さん、身体に手をかざしオーラを放出しながら息を吹き込んで!優志、代わります」
倉橋は尊の横に膝をつき、両手で心臓マッサージをはじめる。
「あぁ!東洞ッ」
相当緊迫した事態だということは二人を見ればわかる。
さっきまで普通に会話していたのに、一瞬で状況が暗転した。
このままじゃ尊が、死んでしまう。
ともだちにシェアしよう!