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第264話

輝く尊の姿が、美しい女性の姿と重なって見えた瞬間… 『『ーー眠りなさいーー』』 心地よい、優しい旋律のような声が脳内に直接響き… 柔らかく撫でるように妖魔へ手を伸ばした瞬間、部屋全体が眩い光に包まれる。 「ぅぁあああッ」 土蜘蛛の宿主の母親が断末魔のような叫び声をあげ、その場に倒れふす。 側にいた娘も、何の抵抗もせず床に横たわる。 光が収束した時。 再び尊が床に倒れこんだ。 「尊ッたける!!チッ結界術、再結印」 すぐ優志が駆け寄り、まず身体の結界を閉じる。 「尊くん!しっかりして」 倉橋も焦っている。 「ッ」 慌てて近寄り尊をみると… 床に横たわり、顔面蒼白…白髪になり、口からは一筋血が滴っていて、ぴくりとも動かなくなった尊の姿。 「くそッ!尊ッヤバイ心臓がっ」 尊の胸に耳を当ててそう叫び… 優志も右腕をかなり刺されているため流血しているが、片手でも心臓マッサージを始める。 尊は心肺停止状態に陥っていた。 「国近さん、身体に手をかざしオーラを放出しながら息を吹き込んで!優志、代わります」 倉橋は尊の横に膝をつき、両手で心臓マッサージをはじめる。 「あぁ!東洞ッ」 相当緊迫した事態だということは二人を見ればわかる。 さっきまで普通に会話していたのに、一瞬で状況が暗転した。 このままじゃ尊が、死んでしまう。     

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