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第269話

「勉強したし、恋もしたから」 ちらっと国近を見て、零してしまう。 「そうなんだ」 「僕はもう大丈夫、だから柚木くんはこれからも逆境に負けないように頑張ってね、約束!」 「うん、約束する」 数年の刻を得て、しっかり手を握り合った二人。 傷も深いけれど和解したことで、気持ちは晴れやかだった。 柚木には倉橋先生が事の顛末を説明してくれて事後処理をしてくれた。 怪我をしている優志と尊を、優志の車に乗せ運転して、病院を目指す。 優志は不機嫌で一言も喋らずいたが出血多量の影響か、そのうち後部座席で眠りはじめた。 優志は右手と右腕を包丁で数カ所刺されており、袖が血に染まるほど出血している。軽く手当はしているが、早く本格的な治療させないと。 心配だったが、呼吸も安定しているし眠っているようなので休ませてやることにする。 代わりに目を覚ました尊が助手席から話しかけてくる。 「本当に、僕、天照様をかからせたんですね、あの瞬間の記憶がないので、びっくりしました」 「あぁ、そうらしいな、俺にも分かったよ、あの神々しさは」 「多分、国近さんが場を清浄化してくれていたから、天照様も降りてきやすかったんですよ」 相変わらずニコニコして話す尊だが… 「お前の命が助かって良かった」 心臓が止まっていたんだから、今考えてもゾッとする。     

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