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第277話

しかし… 「どうしました?」 そう何も知らず首を傾げ、幸せそうな尊を見ると… その言葉が詰まって出てこない… もう少し、幸せな気分のままで…居させてやりたい。 「いや、…そういえば昼は食べたのか?」 「はい、冷蔵庫にあったのを温めて、啓介さんが作ってくださったんですよね」 「あぁ、」 「美味しかったです、ありがとうございます」 「夕食は何が食べたい?お前の好きなものを作ってやるから」 作ってやれるのも最後になる筈だから… 「本当ですか!何にしようかな、天津飯とかきのこ餃子もいいなぁ」 「ふっ素直だな」 喜ぶ尊をみると本当に可愛いなと思ってしまう。 願わくば…二人で過ごす時間がほんの少しでも長引くなら…もっと色々な話が出来たんだがな…。 別れのカウントダウンは始まってしまった。 その後、尊を布団で休ませて、夕食の支度を始める。 リクエストの天津飯ときのこ餃子に野菜スープをつけてやる。 しばらくすると、尊も起きてきて、調理の手伝いをしてくれる。 元気になってくれて本当に良かった。 出来上がった食事を二人で食べて、一日中ずっと一緒にいるのは初めてかも知れない。 まだ実感がないけれど、こうして過ごすこともなくなるのか…     

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