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第279話

流石温泉、よく湧いていい気持ちだ。 「啓介さん、入りますね」 そこへ禊を終えた尊が、そろりと入ってくる。 「あぁ、早く来い、寒いだろう」 「大丈夫です」 ゆっくり隣に浸かりながら微笑む。 「……尊は綺麗な肌をしている」 「そうですか?禊してるからかな」 「初めて一緒に風呂に入った時も、少し目のやり場に困ったよ」 「そうだったんですか、啓介さんすごい普通だったから分からなかった」 「はは、」 「僕はそばに行って抱きしめてもらいたいって思ってました」 そっと身体を寄せてくる尊。 「たける」 優しく抱きしめてやる。 「気持ちいい」 透けるような白い髪が、余計に神秘的な雰囲気を漂わせて… そう身体を預け、小さく息をつく尊は本当に綺麗で…。 「若くて、貴重で美しいお前を…俺が独占していていいんだろうか…」 「え?もちろんです、僕は啓介さんだけのものですよ!」 「たける…」 そっと頬を寄せて、優しく口づけを落とす。 「ん、っハァ…」 すると尊はぴくんと震え、可愛い反応を見せる。 「俺はいつか、バチが当たるな」 「バチなんかあたりません、こんな善良な啓介さんが当たるわけないです」 「俺も嘘はつくよ」 「それは、他人を思っての嘘でしょ?自分の為の嘘とは全然違います」 「そうか、」 別れることを伝えられないのは… 尊を思ってなのか…? 尊との幸せな時間を長引かせたい自分の我儘じゃないんだろうか…。 「啓介さん?」 「そろそろ上がるわ」 尊を求めて疼く身体…これこそ、自分のエゴだ…。

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