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第288話
会社の駐車場の傍らに立つ男。
退院したその足で来てくれた優志だ。
「優志、待たせたな」
「あぁ、片付けてきたか?」
「あぁ、会社には辞表を出した、」
「尊には言ってないだろうな」
「あぁ、明日も会えると思っているから、フォロー頼むよ」
「分かった、尊のことは任せろ」
「あぁ、本当にすまなかったな」
もう一度、頭を下げて謝る。
「…なら始める」
「……」
短い会話の後、俺は優志から人払いの法を受けた…。
「……ここは、」
駐車場の傍らに蹲っていた。
術をかけられた衝撃で数時間は眠っていたのか、あたりは真っ暗になっていた。
重い腰を上げ、自宅へと帰る。
独り住まいのマンション。
玄関を入り、リビングへ…
リビング…
アイツはフローリングとテレビを珍しがっていたな…
ここで告白して、尊とは恋人同士になった。
本当に短い間だったな…。
寝室に入り、ネクタイを解き、スーツをかける。
「…そうか、もう明日は着なくていいんだな」
仕事一筋で今日まで来て…
毎日、同じことを繰り返して、平凡で波風立たない生き方をして来た。
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