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第293話

「大人なんだから隠しておかないといけないことくらい誰だってあるでしょう?僕だって、もう一人の大人なんです、優志さんに伝えられないことだってあります!それを全部、嘘をついたとか信じられないとか、そんなのおかしい!」 「たける」 「早く、術を解いてください、僕から大切な人を奪わないで…」 「尊、落ち着け、お前に必要なのは結界師の俺だけだ、他には何も必要ないんだ、お前は国近のオーラに惑わされただけ、アイツも俺たちに嘘をついて俺たちの能力を使った、柚木と何も変わらないだろ、そのせいでお前は死にかけて…」 「違う違う!!」 不意に尊は、優志の持っているカバンに手を入れ、何かを掴み出した。 「尊ッ!」 「ッ、国近さんにかけた術を解いてください、僕は、国近さんに会えないなら生きていても意味がない、」 それは、結界師が壁や鉄板などに結界術式を書くときに使う細身の短剣のような道具、切れ味がよく人間の皮膚など軽く貫通する。 頑丈な鞘を投げ捨て、自分の首へ…その刃を突き立てて、優志に訴える。 「ッ尊、落ち着け!」 思わぬ事態に相当焦る優志。 「僕は本気です、国近さんに会えないなら、今この場で首をかっ切って死にます」 「ッ、分かった、とりあえずそれをかせ、」 「術を解きに行ってください」 「行く、行くから、とにかく危ないから、それを貸せ!」 こんなことで、大切な尊を死なせるわけにはいかない。     

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