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第296話
「オーラの心地良さと混同してるんだろう」
そんな国近へ、やや怪訝な顔をしながら答える。
「そうだよな、…俺もそう思った」
「……お前、」
国近の含んだ言い方に、嫌な感覚がはしる優志。
「それでもな、俺は、無邪気に懐いてくる東洞尊に恋をしてしまったんだ」
ゆっくりと、真実を伝える。
「っ!?」
「どうしたらいいと思う?」
そして真剣に問う。
「ッやめろ、嘘だろ?」
「……」
嘘でこんな事は言えない。
「ふざけんな!尊は男だぞ!東洞家の大事な跡取りなんだ!歳だって離れてるし…お前には、尊が昔どんな目に遭ったかも伝えていただろ、それなのに…」
カッとなり怒鳴る優志。
「…そうだな、…だから確実な方法で別れを選んだんだ、もう二度と逢えないように…」
本気だと云う思いを伝える為、まっすぐ優志を見て答える。
尊に近づかないようにする為…術を受けた。
「ッ…」
「もし、術を解いたら、俺はお前の大切な東洞尊に、口では言えないようなことをするかもしれない」
「お前…ッ」
「どうする?」
「……もし本気で言ってるなら、尊のことは諦めてくれ」
優志も真剣な眼差しで伝えてくる。
「……昨日、お前に人払いの術をかけられてから、もう東洞には会えないんだということを実感したら、何もかもが億劫になって、無気力になってしまった、東洞の存在は、いつの間にか俺に活力を与えてくれていて、俺の中で存在感を増していたんだ」
「……」
ゆっくりと冷静な口調で話す国近に、怒る気持ちを抑えつつ話に耳を傾ける。
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