295 / 300

第296話

「オーラの心地良さと混同してるんだろう」 そんな国近へ、やや怪訝な顔をしながら答える。 「そうだよな、…俺もそう思った」 「……お前、」 国近の含んだ言い方に、嫌な感覚がはしる優志。 「それでもな、俺は、無邪気に懐いてくる東洞尊に恋をしてしまったんだ」 ゆっくりと、真実を伝える。 「っ!?」 「どうしたらいいと思う?」 そして真剣に問う。 「ッやめろ、嘘だろ?」 「……」 嘘でこんな事は言えない。 「ふざけんな!尊は男だぞ!東洞家の大事な跡取りなんだ!歳だって離れてるし…お前には、尊が昔どんな目に遭ったかも伝えていただろ、それなのに…」 カッとなり怒鳴る優志。 「…そうだな、…だから確実な方法で別れを選んだんだ、もう二度と逢えないように…」 本気だと云う思いを伝える為、まっすぐ優志を見て答える。 尊に近づかないようにする為…術を受けた。 「ッ…」 「もし、術を解いたら、俺はお前の大切な東洞尊に、口では言えないようなことをするかもしれない」 「お前…ッ」 「どうする?」 「……もし本気で言ってるなら、尊のことは諦めてくれ」 優志も真剣な眼差しで伝えてくる。 「……昨日、お前に人払いの術をかけられてから、もう東洞には会えないんだということを実感したら、何もかもが億劫になって、無気力になってしまった、東洞の存在は、いつの間にか俺に活力を与えてくれていて、俺の中で存在感を増していたんだ」 「……」 ゆっくりと冷静な口調で話す国近に、怒る気持ちを抑えつつ話に耳を傾ける。     

ともだちにシェアしよう!