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第297話

「優志、俺は東洞尊が好きだ。何度も誤魔化そうとした想いだから解る、物理的に引き離されなければ諦めるのは難しい」 「…っ」 「東洞尊は、確かに貴重な存在だ、俺なんかが好きになってはいけないような、それも充分、分かっている、だから何度もこの想いを誤魔化したり無視しようと思ったんだ」 「……」 「けれど、無理だった。東洞尊が愛しくて仕方ない…お前の育て方は間違っていないよ、アイツは、か弱いように見えて芯がしっかりしている、優しくてとても魅力的な青年に育っている」 「当たり前だ」 フンっと顔を背け、それだけ答える。 「優志、俺たちの交際を認めてもらえないだろうか」 「ッ…」 「出来るだけ、お前には隠し事はしたくないんだ、東洞尊を大切に思う者同士」 「……国近、」 「優志が見えない場所では、俺が尊を守る、尊が俺に興味がなくなったら潔く身を引く、この歳だ、そう長くは続かないだろう、だから、少しの間、許してはくれないか?」 真剣な眼差しで、東洞尊の守り人に頼む。 「っ、俺には分からない、ただ、尊のお前への想いは命をかけるほどなんだ、それを秤にかけられたら許すしかないだろう」 ここで国近の術を解かずに戻ったら、尊は何をするか分からない。 もう二度と、自分の判断で尊を危険に追いやる事はしたくないから…。 「すまないな、優志」 「はぁ、始める」 大きく息をつき、尊の願いを叶えるため、解術を執り行う。 力を増幅させる符を左手に挟み、集中する。     

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