297 / 300

第298話

「解術の法、開。此の者にかけられし呪術を今一度我が手によりて、解印し、一切を無に返せ」 優志が唱えながら、紙符のようなものを額に押し付けてきた瞬間、全身にズシンと重みを感じ、それが次第に霧散していくような感覚が身体を支配する。 「ッ、ぁ…ハァ、ハァ…」 全身の力が抜けてしまいそうになり、ガクッとと片膝をついてしまう。 「解術の法、結。」 優志は集中を解き、身体を支えながら声をかけてくる。 「大丈夫か?」 「あぁ、ハァ…」 「なら車へ乗れ、尊が待っているから」 「すまないな、」 なんとか歩き出しながら、優志の車に乗り込んだ。 優志に連れられ、再び東洞家へ到着する。 はやる気持ちを抑え、脇の小扉をくぐると… 「国近さん!!」 尊が駆け寄ってくる。 「尊…」 自然と駆け寄っていた。 そのままギュッと抱きついてくる尊。 「たける…」 その身体を包み込むように抱きしめる。 名前を呼ばれ顔を上げる尊… 瞳が重なり… 抑えられない想いが溢れ出す。 そっと頬に手を添えて、その可愛らしい唇へ優しく口付ける。 「ん、ッ…っ」 オーラを感じぴくんと震える尊… 優志の目の前で、何度か口付け、深く絡み合う… 「……」 「っ、ハァ、国近さん、僕、怒ってるんですよ!キスくらいじゃ許しません」 「すまなかった…」 素直に謝るしか出来ない。 「勝手に別れるとか、僕の前からいなくなるとか、絶対許しませんからッ」 想いが余りポロポロと涙がこぼれ落ちる。 「俺も、お前がいないと駄目みたいだ…愛している尊」 その涙をそっとぬぐい、もう一度、愛しいその人へ優しく口付ける。     

ともだちにシェアしよう!