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奥の手3
ぱしゃっとシャッターを切るような音がして、何事かと振り返ると、揃って眩しいほどのおかず二人……いや、イケメン二人が笑っていた。後光が差していると半ば本気で思いかけたが、ただ太陽を背負って立っている坂田と不知火である。
「言ったでしょ、絶対お仲間だって」
「いい絵が撮れたな」
二人して何やらニヤニヤと言葉を交わしながら携帯を構えている。目的が見えないが、何か良からぬことを企てている顔だ。
「お前ら、勝手に写メを撮っただろう」
さりげなく背中に陸空を庇いながら、大祐が進み出る。小声で「早くはけ」と言っている。一瞬反応が遅れたが、すぐに何のことかを察してズボンを引き上げた。今さら慌てたところで遅いが、情けない格好をしていた。
「何のことかな?」
不知火は伸びやかに惚けて見せて、坂田に視線を投げ掛ける。すると心得たように、坂田は精悍な顔を歪めて笑うと、核心をついてきた。
「人のこと言えないんじゃねえの。お前ら、こないだからこそこそと人のこと見ていただろ」
「面白いから、俺たちも見せつけてやろうってことにしたんだよね。そしたら、やっぱり君たちもお仲間でした、なんてオチ」
不知火の手のひらで掲げられ、ひらひらと振られている携帯の画像は、先ほどの自分たちに違いない。ざっと血の気が引いた。
「俺はただの変態だと思っていたけどな」
「坂田は考えが浅いよー」
「何だと」
勝手に二人で言い愛……失礼、言い合いを始めてしまいそうなところで、大祐が声を絞り出す。
「それで……お前らは何が望みだ。俺たちを晒し者にでもするのか」
「んー、どうしようかな。ねえ」
不知火が考える素振りを見せて、坂田を見やる。嫌な予感がした。
「俺たちもこんなことはしたくないんだが……ちょっと遊びに付き合ってくれないか」
「遊び?」
大祐が声を震わせた。見ていられない。お得意の妄想力で、陸空にはこの後の顛末をはっきりと予測できてしまった。自分が辱しめを受けるのは構わないが、大祐が危ない目に遭うのは避けたい。いくらなんでも3Pとか4Pは初心者には早すぎる。
そこで、陸空は最終兵器を取りすことに決めた。
「ちょっと待った」
声を張り上げると、三人の視線が陸空に集中する。陸空は悲壮感に包まれた表情で苦渋の告白をした。
「ずっとお二人の追っかけをしていました。隠し撮りもありますが、二人の関係を色々と妄想して作品にし、コミケで販売したことも多々あります。申し訳ありませんでした」
土下座せんばかりの勢いで頭を下げると、沈黙が返ってくる。あまりに長過ぎる沈黙だった。
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