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彼の弟さん

「りゅ、龍さん!」 彼の腕の中、じたばたするも、逃げられる術はなく。シャツに顔を埋めながら、ふと、信孝さんに抱き締められている錯覚に襲われた。 あっ、この感じ。 何故か分からないけど、すごく、落ち着く。 思わず、ぎゅっと、シャツを掴むと、頭の上で苦笑いされ、腕に力がこめられた。 「意外と可愛いとこあるじゃねぇか」 「寝る気がないなら、離してください」 「なんで!?」 「バイト行かないといけないんです」 「信孝の稼ぎで、いちいち働く必要ねぇだろ」 「それはそうかもしれませんが・・・」 あとに続く言葉が見付からなかった。 「あの、信孝が嫁を迎えるで、ちょっとした騒ぎになっていて、オレは別に誰でも構わないんだが。写真だけで、何処のどいつかも分からねぇし」 写真って・・・。 まさか、アレの事!? それ、僕です。 とも、正直に言えず、ただ黙り込むしかなかった。 でも、『あの、信孝』の、゛あの゛って、どういう意味たんだろう。 聞くにも聞きずらくて、どうしようかと悩んでいると、突然、聞きなれない着信音が鳴り響いた。 「出ないんですか!?」 龍さんは何も答えない。 一度目は直ぐ切れたものの、また、すぐ鳴り始めた。今度はいつまでも鳴り続けている。 「龍さん」 「本当、しつこい奴」 次第に苛立ちを隠し切れなくなった様で。 「ナオ、代わりに出ろ」 「僕がですか!?」 「あと、誰がいるんだ。胸ポケットに携帯が入っているから。オレは寝る」 「ちょっと、龍さん、寝るって」 この腕をほどいてくれるわけもなく、仕方なく、言う通りにした。 ー今、どちらに!?ー 電話の相手は男性だった。 「あの、すみません・・・。龍さんは、今、寝てます」 ーもしかして、ナオさん!?ー 自分の名前が出てきて驚いた。 ーはじめまして、昆と申します。信孝とは幼馴染みの間柄でして、貴方の事は彼から聞いていますー だから、分かったんだ。僕の事。 ーそこにいる、龍成さんの子守り担当をさせて頂いておりますー 「子守り担当!?」 昆さんの言葉にに首をかしげると、龍さんが、ぼそっと呟いた。 「ようは、監視役」

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