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凛香さんの涙
休憩時間に携帯の画面を覗くと、凛香さんからの着信履歴が残っていた。
なんだろう・・・
もしかして、信孝さんとのかな。
電話を掛けるべきか、掛かってくるのを待つべきか、悩みに悩んだ末、リダイアルを押した。
ーごめん。バイト中だったよねー
いつも通りの明るい声。
「大丈夫です」
ー信孝の携帯に何度掛けても出ないから、ナオくんと一緒かと思ったの。ごめんねー
「いえ。あ、あの、凛香さん」
ーん!?何!?ー
ちゃんと、謝らないといけない。
昨日の夜の事。でも、どう説明したら・・・
「凛香さん、そ、その・・・」
ーだから、何!?ー
「好きなんです。信孝さんの事。ぼ、僕に下さい」
わっ、わっ、わっ!何、何、言ってるんだ。
「ごめんなさい」
ブチっと、一方的に電話を切った。
後先考えず、思わず、口走ってしまった。
どうしよう・・・。どうしよう・・・。
着信音が鳴り響く、携帯を片手に、茫然自失となった。
お陰で、バイト中、色々考えすぎて、ミスってばかりで、先輩のパートさんに一杯注意された。
本当に何してるんだか。自分が情けない。
バイトが終わり、信孝さんが迎えに来てくれた。
何かあった!?と心配されたけど上の空で。溜め息ばかり吐いていた。そんな僕に、彼は呆れ果てている様子だった。
「ナオ、何か、あった!?」
先に横になっていると、ベッドが沈み、信孝さんが布団に潜ってきた。
「ナオ、ナオってば」
何度か呼ばれ、はっと我に返った。
「何か、変だよ」
後ろで彼がもぞもぞ動く度、腰に、何か硬いものが当たった。
「の、信孝さん!なんで、裸っ・・・」
服越しに伝わる、早鐘を打つかの様な彼の鼓動。肌から伝わる温もりは、心地よくて。
「下は履いている」
背中からくすっと笑い声がした。
「隠し事をされるのは嫌い。悩み事なら、相談にのるよ」
「う、うん・・・」
凛香さんに言った事を、本人の前でなんか言える訳がない。
「別に大したことじゃない。ぼおっとして、ミスってばかりで、一杯、注意されたから」
「本当!?」
小さく頷くと、彼の態度が急変した。
「ナオって、嘘つくの下手だよね」
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