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彼の告白と凛香さんの涙
「ナオさん、目が覚めたようですね」
カーテンが開き、昆さんが顔を出した。
「過呼吸の発作を起こし、意識を失って、この病院に緊急搬送されたんです。丸一日、ずっと眠ったままだったんですよ。信孝、さっきまでは起きていたんですが、流石に寝ていなかったので」
「ごめんなさい、僕のせいだ」
「大人げなかったと反省していましたよ。ナオさんは悪くありません」
「信孝さんが!?」
「ええ」
昆さんに言われ、彼の方に目を向けた。
疲れの色が滲む、その横顔。少し、やつれたように感じた。そんな僕に、昆さんは温かい眼差しを向けてくれた。
「・・・一年前、信孝は、ここでの生活を切り上げ、実家に戻って、家を継ぐ覚悟を決めたんです。それが、突然、家を継がないと言い出して・・・。理由を聞いたら、大切に思う人がいるから、その人を守りたい、そう言われまして。彼は、ずっと貴方の事を思い続けていたんです。でも、男同士。一緒になれる訳がないと、凛香さんとの結婚を決めたんです。彼が目覚めたら、凛香さんと、三人でよく話し合って、今後の事を決めればいいと思います。」
昆さんの言葉に、はい、と返事をしたけれど、涙にのみ込まれた。
「何かあったら呼んで下さい。私と、光希とで交代で外にいますから」
「はい、すみません」
涙を手の甲でごしごし拭いながら応えると、昆さんがカーテンの向こう側に消え、信孝さんと二人きりになった。
さびしがりやの彼に寄り添って生きていけたら、どんなにいいか。
僕は、もう一方の手を彼の手の上に重ねた。
一度は止まったはずの涙が、知らず知らずのうちに溢れ出ていた。
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