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彼と満ちる想い
冬の儚い陽の光が、カーテン越しにキラキラと輝いている。
静かで、穏やかな朝ーー。
大好きな彼の腕の中。
指一つ動かすのもおっくうなくらい、体が怠く、あちこちに痛みはあるけれど、不思議と、幸せに満ち溢れていた。
「ナオ」
こめかみに優しく降るキス。
「大好き」
むぎゅっと、彼にしがみ付くと、満足そうに彼が微笑んでくれた。
例え、記憶が戻ったとしても、
過去の僕を知る人が現れたとしても、
僕の帰る場所は、彼の、この腕の中。
さびしがりやの彼に、寄り添い、生きていこう。
「ナ、ナオ」
彼の慌てふためく声が。
「あんまり、くっつと、非常にまずいかも・・・そ、その・・・
抑え効かなくなるから。バイト、休ませる訳には」
変な所が生真面目な彼。
そこが、かっこいい。
一生懸命、背伸びして、彼の唇に、軽くちゅっ、とした。
「ナオ!」
一瞬、驚く彼の声。
「もう、どうなっても知らないから」
「だって、信孝さん、好きなんだもの」
半ば、呆れながらも、幸せそうな笑顔を見せてくれた。
ゆっくりと、唇が重なりーー。
多幸感の中、次第に激しくなる口付けに、うっとりとして、身を委ねた。
ー 続 ー
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