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   雪弌が洸龍の首にその手を回そうとする。    洸龍が突然離れる。 洸龍「……ごめん、止めよう」    その足で居間に向かう洸龍。    洸龍の背中に向かって、 雪弌「止めるって、何を止めるんだ!」 〇同・居間(夜)    洸龍、立つ。足元には寝ている光太郎。 洸龍「(力なく)言葉の通りだよ」    雪弌、入る。    光太郎が目を覚ます。 光太郎「洸兄ちゃん、雪ちゃんと……  ケンカしてるの?」    眠い目を擦り、起き上がる光太郎。    洸龍、光太郎の頭を撫でてやろうとして    躊躇い、手を止めてその場を離れる。    光太郎、不安になる。助けを求めるように    雪弌を見る。    雪弌が光太郎の傍に身を寄せ抱きしめる。 光太郎「雪ちゃん……泣いてる?」    ピタリと立ち止まる洸龍。    だが振り向く勇気はない。    雪弌は光太郎を抱きしめる。    優しく諭すように、 雪弌「泣いてないよ」    雪弌が、すうっと息を吸う。    洸龍の背中をキッと見上げ、 雪弌「私は怒っているんだ!」    洸龍は、まだこちらを向かない。    光太郎、不安になって雪弌の着物を    ぎゅっと握りしめる。    雪弌は安心させるように微笑んだ。 雪弌「……アイツにわからせてやらないと」    洸龍に聞こえない程度の声音で 雪弌「周りの人間にどれだけ愛されているのか」    光太郎は安心して頷く。    こしょこしょと雪弌に耳打ちする。 光太郎「雪ちゃんも洸兄ちゃんが好き?」    雪弌、人差し指を口にあて、頷く。

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