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「あはは、お兄ちゃんったら直球だね」
「…いや、ごめん。こんなこと聞いて」
「別々の部屋で寝たよ。ね、雷君」
「…ああ」
「……え、本当なのか?」
キョロキョロと二人の顔を見合わせる。すると二人はコクンと縦に頷いた。その事実にどこか安心してしまった兄を許して欲しい。…やっぱり俺は今も変わらず武宮さんのことが好きだから。
「本当の本当よ。こんな可愛い子に触れもしないなんて、雷君勃起不能?」
「…ぼ、ぼっ…き!?」
先程と変わらず妹は可愛く笑う。しかし妹の口から出た言葉はなんともはしたない言葉で、俺は飲んでいた水を噴出してしまった。
「ちょ、お兄ちゃん、汚ーい」
「…わ、悪い、…いや、で、でも、」
俺はチラリと武宮さんの方を見てみた。すると眉間に皺を寄せて不満そうな表情をしている武宮さんと目が合う。
「俺は、…不能者じゃない」
え?な、何で俺を見てそんな事を言うんだ。弁解しておきたいのは妹じゃないのか?…少しムスッとした表情もまた格好いいなとか思いながら、俺は軽く妹の頭を叩く。
「こ、こら、変なことを言うんじゃない。武宮さんに謝りなさい」
「…むー、雷君ごめんね」
「………」
武宮さんやっぱり怒ってしまったんじゃないのか?まだ眉間に皺寄ってるし。…で、でもこの険しい表情もやっぱり格好いい。
だがしかし、男の人にぼ、勃起不能なんて言うとは妹も、…末恐ろしい。俺は何処かで妹の教育を間違ってしまったのだろうか。
これからの教育について頭を抱えてあれこれと悩む。
すると俺の頭を悩ます原因を作った愛しの妹が、ガタっと音を立てて座っていた椅子から立ち上がった。
「ど、どうした?」
「私、お風呂入ってくる」
「……え?」
「今日土曜日だし、ゆっくり朝風呂でも入ろうっと」
「ちょ、待っ、」
俺は慌てて風呂に入ろうとしている妹を止めようとする。だがしかし、それよりも妹の行動は早くて、俺が止める前に風呂場へと向かってしまった。
「………、」
う、嘘だろ。
何で昨日に引き続き、武宮さんと二人きりになってしまうんだ。妹が居る内に急いで朝ご飯を食べて部屋に引き篭もろうと思ってたのに。…こ、これでは部屋に戻りにくいじゃないか。
「………」
「………」
客人をリビングで一人きりにするのは不躾だと思う。だが昨日のように会話に失敗して変なことを口走った挙句、「練習」だと意味の分からない口実を作ってキスするよりはマシだ。このまま部屋に戻った方が得策だろう。俺はそう考えて、妹の作った朝飯をマイペースに食べている武宮さんに話し掛けた。
「あ、あの、」
「………」
「お、俺、部屋に戻ります」
よし、よく言った俺。武宮さんと一緒に居たい気持ちはあるけれども、それ以上に武宮さんにはこれ以上迷惑掛けたくないし、妹にも幻滅されたくない。
名残惜しいもののこのまま自分の気持ちを押し殺して部屋に戻ろうとした瞬間、急に腕を掴まれた。
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