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「ふ、ぅ…ァ、…?」
下半身への甘い刺激に俺は失っていた意識を浮上させた。思わず上ずった声が出てしまうほどの気持ち良さに、自分の下半身に視線を向けてみれば、何と武宮さんが俺の精液塗れのペニスをティッシュで拭いていたのだ。
「な、…っ!?」
俺は慌てて武宮さんの手を掴む。愛しの武宮さんにこんなことをさせるわけにはいかない。俺のなんて、汚い…。
「だ、駄目です」
武宮さんの手を掴んで止めさせれば、何故か不満そうに見上げられた。
「…綺麗にするだけだ」
「自分で、出来ますから…っ」
本当は俺なんか触れてもらう価値すらないんだ。握手だってキスだって、俺にはそんな大層なことをしてもらう価値なんかない。何処までも汚い男なのだから。
しかし武宮さんは俺の返答に納得出来なかったのか、何故か俺の汚れた下半身に顔を近づようとしてきた。俺はそれに酷く焦った。これ以上近付かないように武宮さんの額に手を置いて押し返す。
「ちょ、…た、けみやさん…!」
「…手で拭えないなら舌で舐め取るしかないだろ」
「……っ、」
あれ?武宮さんってこんな人だったのか?
集めた情報とは違って結構強引で我侭な人じゃないか。俺のリサーチが足りなかったのか。後できちんとメモをしておこうと思いながら、武宮さんから距離を取った。
「ほ、んとうに、自分で出来ますから」
「………」
「お手数掛けて、ごめんなさい…」
どうやら俺が意識を失っていたのはほんの数分だったようで、放った精液は固まることなく肌に付着していただけだった。俺は急いでティッシュでそれを拭き取る。その一部始終を視姦するように武宮に見られ恥ずかしい思いをしたのだが、武宮さんの手で拭かれたり、舌で舐められたりするよりも何百万倍もマシだ。…というか本気で舐めるつもりだったんだろうか?いや、冗談…だよな?
「えっと、トイレ…行きますか?」
ちらりと武宮さんを見てみれば、嫌でも目に入ってしまう武宮さんの下半身。俺とは違ってまだ欲を吐き出していないせいで、苦しそうにズボンを押し上げるようにして自己主張をしている。…ああ、どうせなら俺の手で射精に導いてあげたい。きっと身体と同じように大きくて太いんだろう。その武宮さんのペニスを触って、匂って、手で扱いた後、舌で舐めてあげたい。喉にあたって咽てしまうほど奥まで銜え込んで吸ってあげたい。そして吐き出した精液を一滴残らず飲み干してあげたい。きっと我慢している分、濃くて青臭いのだろう。……やばい、想像しただけでまた勃ってしまいそうだ。
俺は淫らで穢れた思考を掻き消すように頭を横に何度も振った後、大きく息を吸って、そして吐いた。男で、しかも妹の兄である俺がこんなことを思っているなんて知ったら武宮さん幻滅するだろうな。…というか気持ち悪がられて二度と俺の前に姿を現してくれないだろう。
……それだけは嫌だ。
「俺も、…着替えてきますから」
そう言って自室へと戻ろうとすれば、何故だか武宮さんも俺の後をついてくる。
「…た、けみやさん?」
「……」
「あ、の…?」
「…風呂場の方へは行けない」
「……あ、」
そうか。
まだ妹が風呂に入ってるからな。脱衣所に入らないとトイレに入れないようになっているから行きたくても行けないのか。それに近くに恋人が居るというのに、集中して自慰も出来ないよな。
「………」
…風呂場に居る妹のことを想いながら、トイレで自慰する武宮さんを想像して、ムカッとした。それは嫌だ。
それなら、俺の部屋に居てもらった方がまだましだ。
「俺の部屋、来ますか…?」
「……」
コクリと頷いてくれた武宮さんに俺は内心喜んだ。
だがしかし…それと同時に自分の醜さに吐き気がした。
本当にこのままいくと、無理矢理にでも妹から武宮さんを奪ってしまいそうで、…怖い。
「適当に、腰掛けてください」
武宮さんを自室に案内した後、何処でも好きな所に座ってくださいと促せば、武宮さんは了承の意味で再びコクリと頷いた。
すると武宮さんは迷わず俺がいつも寝ているベッドに腰を掛けた。…好きな人が自分のベッドに腰を掛けている姿って何か、ドキドキする。
「……」
「……」
「……」
俺はとりあえず床に置いていたクッションの上に腰を下ろした。そして再びの沈黙。
だけどこの沈黙はそれほど苦に感じない。というのは、今は別のことで頭がいっぱいだからだ。
「武宮さんに見られたらいけないものはちゃんと隠してたよな?」、「あのメモ帳は引き出しの一番奥に隠してたから大丈夫なはず!」、「ああ、やっぱり武宮さん格好いい!」、「今俺のベッドに腰掛けてるんだ…」…そんな色々なことが頭の中で駆け回る。
「……」
「……」
しかし俺は自分の部屋に武宮さんが居てくれるだけで満足だが、武宮さんは退屈かもしれない。やっぱりここは俺が会話を提供したほうがいいのだろうか…?
いやいや、落ち着け。それは駄目だ。きっと前回のように会話のチョイスに失敗するに違いない。
それならここは静かに黙っていた方がいいだろう。
そう自分に言い聞かせたのと同時に、勢い良く俺の部屋の扉が開いた。
「お兄ちゃん、大丈夫!?」
もちろん開けたのは妹だ。
…良かった。変なこと口走っていなくて。
というかいきなり扉を開けてきたと思えば、何を意味の分からないことを言ってるんだ?疑問に思っていると、妹は俺と武宮さんを何度か見比べた後、不満そうに溜息を吐いた。
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