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ベリアルのプレゼント《8》
自分は長男なのだから、いずれは嫁を貰って、家を継ぐつもりだった。
その為に
、来る日も来る日も家業の庭仕事の修行に明け暮れた。
そんなありきたりな話を、凄いと飛び跳ねて喜んでくれたのが、ルノアだった。
(大切な、理由があった)
あんなに華奢で可愛らしいルノアが、あの誰も近寄らない広い城で寂しい思いをしている。
それを知って、ベリアルの城の仕事を断るなどと言う事は、ラルドには
出来なかった。
勿論、それは簡単な事ではなかったけれど…。
「ベルゼブブ様…、俺、ベリアル様の城で働きます」
「そうか」
頷いたベルゼブブは満足げだった。
ベリアルが、誰か特定の者を雇いたい等と言うのは初めての事だった。
これも、ルノアの影響かとベルゼブブは思う。
少しずつ変わり始めている親友に、まるで己の子供が成長する様な喜びと、恋人が離れていく様な奇妙な寂しさに似た感覚をベルゼブブは感じる。
だが、それで良い。
ベルゼブブは、一人心の中で楽しげに笑うのだった。
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