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ベリアルのプレゼント《16》
「ほぅ、お前が要らないのであれば、庭は潰して、新しい作業場でも建てるとするか」
「え!?」
「丁度、仕事で工場の建設を予定していた所だ。元々はこの城とは離れた敷地に作るつもりの物だったが、お前に必要がないのならば庭の規模を縮小して、あそこに建てても良いでしょう」
それは、あの立派な庭園がなくなってしまうという事だろうか?
そしたら、沢山のお花達はどうなってしまうのだろう。
恐ろしい想像に、私はベリアル様のお袖に縋り付く。
「ど、どうか、庭園を潰したりしないで下さいっ」
「お前はあの庭園は要らないのでしょう?」
「要らないなんて…、あんなに素敵なお庭を頂くのは申し訳なくて…」
「私にとってあの庭園の植物は仕事で必要な物だが、別に仕事の手段はアレでなくとも構わないのでな」
ベリアル様は庭園の植物達を採取してお仕事に使われている。
それをやめて、工場のお仕事を始めるというのだろうか。
もしかしたら、植物を扱うお仕事よりも工場の方が利益が大きいのかもしれない。
私にはよく分からない事だけれど、きっと魔界では、それはとても重要な事なんだろうと何となく知っている。
だからこそ、ベリアル様の言葉に、とても焦って縋り付く手に力が入る。
魔界に迷い込んで不安な時も、ベリアル様がいなくて寂しい時も、いつもあの庭園のお花達が慰めてくれた。
そのお花達が無くなってしまうなんて、想像しただけで胸が締め付けられて苦しい。
「そんな…、お庭が要らないのであれば、私に下さいっ!私、頑張ってお花達を育てますからっ!ベリアル様のお仕事の事は分からないけれど、一生懸命勉強をして、今以上にベリアル様のお仕事にお庭がお役に立てる様に努力します!ですから、ベリアル様のお花達を、私に下さいっ!」
私は、必死にベリアル様を見上げて訴えた。
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