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ベリアルのプレゼント《17》
「ふ…、ははは、お前は本当に分かりやすいな」
急に笑い出したベリアル様を、ぽかんと見つめる。
そこで初めて、ベリアル様が最初からお庭をなくしてしまうつもりなんて無かったのではないかという事に気づく。
「ベリアル様…、今のはもしかして…」
私が、ベリアル様の申出を断ると知っていてのお考えだったのだろうか?
「私が分不相応でも、あの庭園を任せて頂き易い様に、態とあんな事を言ったのですか?」
「くく、私はお前が可愛らしく慌てふためく姿が見たかっただけだ。それに、新しい商売をベルゼブブに勧められているのは事実です。あの庭園は手間暇も掛かるしな。思いつきで言った事だが、お前がいらないと言えば、潰して新しく工場を建てるというのも悪くない」
「ひぇ」
ベリアル様の黒い笑いに、思わず変な悲鳴が漏れる。
やっぱり、ベリアル様がどこまで本気か冗談か分からず、私はぶるりと震える身体を自分で抱き締めた。
「お前が庭園をくれと言うのだ。仕方ない、先程の話は考え直すか」
あんなに素敵な庭園を、私なんかが貰っても良いものかと、申し訳ない気持ちは勿論ある。
けれど、私があの沢山のお花達のお世話ができるなんて、本当に夢の様だった。
折角ベリアル様が任せてくれたのだから、あの綺麗な庭園の花達が毎日元気に咲ける様に頑張らなくては。
「ベリアル様…、私、頑張りますっ!」
決意をして勇んで言った私に、ベリアル様は少しだけ困った様に笑った。
「別に頑張る必要は無い。庭師に花を植えさせて、好きなだけ眺めれば良いだけの話…。………やれやれ、聞こえていないらしいな」
「えっ!?」
急に抱き締められて、驚いて見上げる。
「花を愛でるのは構わないですが、私の事を忘れられては面白くないな」
綺麗な顔で微笑むベリアル様に、視線が捕らわれる。
確かに、庭園の花達の事はとても嬉しいけれど、ベリアル様の事を忘れたりなんてする筈がないのに。
そう言おうとして開いた唇は、ベリアル様の唇で塞がれた。
(ベリアル様、大好きです)
キスで何も考えられなくなる間際、そう心の中で呟いた。
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