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突然の来訪者《8》

「何をしている」 不意に、私達では無い声が後方から響く。 「貴様に私の敷地へ入る事を許可した覚えは無い」 振り返ると、 そこには恐いお顔をしたベリアル様が立っていた。 「べ、ベリアル様っ!?」 「ちっ」 その姿を確認したバルトさんが、舌打ちをする。 「ベリアルの邪魔さえ入らなければ、ルノアを俺の虜にできたのに」 「寝言は寝て言え」 明らかに不機嫌なベリアル様の声に、私もラルドさんも震え上がる。 こんなに恐いベリアル様に平然としていられるのだから、バルトさんはやっぱり凄いと思った。 「じゃあな、ルノア。別れは辛いけど、今度こそ俺に夢中にさせて、目を覚まさせてやるからな!」 そう言って、バルトさんが私から離れる間際…。 ちゅっ。 軽やかな音と共に、バルトさんの顔が離れていくのが、やけにゆっくり見えた。

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