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突然の来訪者《9》
「え………?」
「る、ルノア様ーー!!??」
ラルドさんの悲鳴が辺りに響く。
バルトさんが離れた後、此方を見て不適にニヤリと笑った。
私に対してか、それとも私を通り越して、後ろにいるベリアル様に向かってだったかもしれない。
そこでようやく、私は頬に残った感触が、バルトさんにキスをされたのだと気づいた。
「じゃあな!ルノア、また会いに来るからな!」
言うや否や、バルトさんは地面を蹴り、物凄いスピードで空に消えて言った。
本当に、あっという間の出来事だった。
恥ずかしさに自分の顔がみるみるうちに赤くなっていくのが分かる。
そんな私にラルドさんが駆け寄ってくる。
「る、ルノア様…、大丈夫ですか!?」
心配そうにラルドさんが私の顔を覗き込む。
「は、はい、びっくりしたけど、大丈夫です…」
私の言葉に、一瞬ほっとした表情を浮かべるラルドさんだったが、そのお顔が徐々に悔しそうなものに変わる。
「あ、あの野郎…、ルノア様に何て事を…!」
ラルドさんは、拳を握り、怒りにブルブルと震える。
「わ、私は大丈夫ですから…!」
自分が情けないと嘆くラルドさんに、私は落ち着いて貰おうと、慌てて手を伸ばした。
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