27 / 44

突然の来訪者《10》

「ひゃ!?」 「ルノア様!!!!」 再び青ざめたラルドさんの悲痛な声が聞こえるや否や、急に身体が宙を舞う。 「べ、ベリアル様!?」 私の身体は宙に浮いたまま。 ベリアル様に抱き抱えられたのだと気づく。 何だか嫌な予感に、恐る恐る見上げれば、何の表情も表さないお顔のベリアル様が私を見下ろしている。 (ヒィッ!!??) 悲鳴は声にはならず、咽に張り付いて消えた。 まるで氷の様に冷たいベリアル様の表情に、幾ら鈍感な私でも、ベリアル様が酷く怒っているのがよく解った。 バルトさんの時はあれ程頼もしかったラルドさんも、ベリアル様のあまりの迫力に、涙まで流して震えていた。 私も、計り知れない恐怖に涙ぐむ。 「べ、ベリアル様…?」 絞り出した声は、完全に震えて上擦っていた。

ともだちにシェアしよう!