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突然の来訪者《10》
「ひゃ!?」
「ルノア様!!!!」
再び青ざめたラルドさんの悲痛な声が聞こえるや否や、急に身体が宙を舞う。
「べ、ベリアル様!?」
私の身体は宙に浮いたまま。
ベリアル様に抱き抱えられたのだと気づく。
何だか嫌な予感に、恐る恐る見上げれば、何の表情も表さないお顔のベリアル様が私を見下ろしている。
(ヒィッ!!??)
悲鳴は声にはならず、咽に張り付いて消えた。
まるで氷の様に冷たいベリアル様の表情に、幾ら鈍感な私でも、ベリアル様が酷く怒っているのがよく解った。
バルトさんの時はあれ程頼もしかったラルドさんも、ベリアル様のあまりの迫力に、涙まで流して震えていた。
私も、計り知れない恐怖に涙ぐむ。
「べ、ベリアル様…?」
絞り出した声は、完全に震えて上擦っていた。
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