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ベリアルの過去《1》
「あっ!」
お掃除の途中で見つけた御方に、嬉しくなり駆け寄る。
「こんにちわ、ベルゼブブ様!」
お名前を呼ぶと、振り返り、優しく微笑みかけて下さる。
相変わらず、漆黒の長い髪に漆黒の瞳の格好いい姿に見惚れてしまう。
以前お仕えしていたミカエル様も黒髪だったけれど、ここまで深い黒は天界には無い色だ。
最初こそ恐ろしかったけれど、ベルゼブブ様がお優しい事は身をもって知っている。
魔界に来て、何も知らない私を、助けてくれた事は本当に感謝をしてもしきれない。
ベルゼブブ様は、とても高位の悪魔さんで、ベリアル様の親友です。
こうしてこのお城に、よく遊びに来て下さいます。
「今日も元気そうだな、ルノア」
「はい!お掃除が終わったら、庭園のお花のお世話をするんです!」
「ルノアはよく働くな。時には休息も必要だぞ」
「大丈夫ですよ!毎日楽しい事ばかりしているので、疲れていないんです」
「ほぉ、それは殊勝な事だな。では少し時間があれば、俺の相手をしては貰えないか?」
「ベルゼブブ様のお相手?」
「少し、座って話をして欲しい」
「はい!喜んで!」
「ルノアを楽しませる話があれば良いのだが…。そうだ…」
良い事を思いついた様に、ベルゼブブ様の口角が上がる。
「ベリアルの昔話はどうだ?」
「ベリアル様の…?」
知りたい。
ベリアル様は御自身の事を多くは語らない。
だからこそ、出会う前のベリアル様の事を知りたかった。
ベルゼブブ様に問われて、私は大きく頷いた。
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