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ベリアルの過去《2》

「以前、彼奴が元は天界の生まれで、最高位の熾天使だった事を話したのを覚えているか?」 「はい」 少し前、ベルゼブブ様は、私にベリアル様が元々熾天使である事を教えてくれた。 ベリアル様があれ程までにお美しいのもお強いのも、元々熾天使だったと言われれば、とても納得がいった。 「あれは天界に生まれながら、悪魔の魂を持つ。魔界に降りたってからの彼奴の生命力に溢れている様子を見るからに、ベリアルにとって天界は、さぞ居心地の悪かった事だろう」 ベリアル様は、天界ではお辛い思いをされていたのだろうか。 ベリアル様が苦しい思いをしたのかと思えば、張り裂けそうな程に胸が締めつけられた。 「ルシファーが堕天し、魔界の王になった話は、まだ幼いお前も知っているだろう?」 「はい、神様に反逆を企てたルシファー様が、ミカエル様に敗れ、魔界へ逃げ込んだ末に魔界を征服したと聞いています」 「反逆か…、ククッ、天界は相変わらず御都合主義だな」 「?」 ベルゼブブ様がクツクツと嗤う様子を不思議に思う。 私の言葉がおかしかったのだろうかと首を傾げる。 そうすると、優しくベルゼブブ様の大きな手が、私の頭を撫でる。 「真実というのは、得てして残酷なものだ。だから、面白い」 撫でる手の優しさとは裏腹な物騒な物言いに、思わずふるりと震える。 ひょっとして、恐いお話なのだろうか? 恐いお話は苦手だから、自然身構えてしまう。

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